バイクとキウィたち
「ガイドブックを捨て、旅に出るのをやめよう」
冬樹社新書版、1988年8月30日発行。
ニュージーランドをバイクで旅して、ぼくなりの「旅行ガイド」を書くつもりで資料を拾い集めていた。旅の終わり近く、北島のウェリントンと南島のピクトンを結ぶ国鉄青函連絡船風のクック海峡フェリーにバイクを積み、甲板に上がって、船と競走するように飛び跳ねるイルカの群を眺めていた。
南島のいくつもの重なる岬が間近に見え始める頃にはイルカの群は航跡の向こうに消えてしまった。その時、それまで甲板のキャビンにもたれて座っていた青年が、日本で若者によく売れているガイドブックを片手にぼくのところにやって来て言った。
「このあたりでイルカの群が見られるって書いてあるんですが、見ましたか?」
その時、ぼくは「旅行ガイド」の構想をクック海峡に投げ捨てた。